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言葉と文化
by radiodays_coma13
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電話進化論
初期の携帯電話と言えばとにかくカッコ悪かったね。
しかも、有線電話に比べればベラボーに高価で性能も悪く、
一部のブルジョアジーしか持つことが許されなかった。
それだけに当時のゴルフ好きのバブル成金にとって
携帯電話は悪趣味なステータスとなった。
ショルダーバックのようにデカくてダサい携帯電話は
もちろん女性に人気がなかった。
「携帯電話」といえば「おじさん」という暗号のような関係だった。
軽くて小さな携帯電話が登場すると、携帯する女性も現れた。
だが、依然、携帯電話は健全な職務につく女性には高価すぎた。
そのためバブル成金とその仲良しさんたちのブランドとなっていった。
以後、携帯電話は加速度的に小さく軽くなり値段も手ごろになってゆく。
そうなると今度は物好きな嬉しがり屋さんはこぞって買い求め、
ここぞと街中で見せびらかした。
当時は携帯電話で会話している人種が街の人には異様に映った。
パラノイヤと勘違いし距離をとる者、
自分に話しかけられてると思いきや会話にうなずく老人たち。
携帯電話の永い受難の時代は続いた。

気がつくと携帯電話は自らを恥じるように
取り返しがつかないくらいに小さく軽くなってしまっていた。
それがポケットの中に入っているのかさえ気付かなくなるくらいに。
このように初期の携帯は異物でしかなかったのだ。
そこにファッション性といえるようなものは存在しなかった。
携帯はまだその時、電話の延長線上でしかなかった。
明治から昭和、初期の電話は家の玄関にあった。
それは廊下へと場を移し居間へ、居間から個室へ。
電話は初め、客人として迎えられ、居候となり
家族に進化し、各部屋に忍び込んでゆく。
ついには、電話はその人と行動を共にするまでになった。
しかし、電話はまだ他者であることに変わりはなかった。

名前が携帯から「ケータイ」に変わった時
携帯電話は間違った進化に気づいたようにようやく機能に目覚めた。
番号通知、着信メロディー、モバイル機能、所在地レーダー、写メール。
番号通知がない頃には電話が鳴ると
誰から掛かってきたのかを想像しようとした。
不思議なものでそうしていると、分かったような気になったものだ。
音の鳴り方で相手の機嫌まで感じ取ることが出来た。
しかし、今や通知がないと声を聴いても
誰なのか分からないくらい感覚は退化した。
でも、そんなことはどうでもいい。機能が代理してくれるのだから。
なんなら、機嫌だって顔文字であらかじめ知らせてくれればいい。
そしたら、着メロと合わせて電話をとる前に心構えが出来ると言うものだ。
そうこうしているうち若者にとって
ケータイを携帯していないことのほうが異様なことにまでになった。
単なるアクセサリーではなくなった時、
はじめて携帯は個々に適応するファッション性を獲得することになる。
いや、そのチンケな仮装を脱ぐというべきだろう。

では、今後どうなるのか?
携帯はより個人と同一化してゆくだろう。
すでに都市生活には切っても切り離せない身体の一部なのだ。
いっそのこと頭に埋め込んだらどうだろう。
そしたら念じただけで念じた人と会話が出来る。
まるで超能力みたいじゃないか。
いや、ケータイは人類の夢見たテレパシーそのものなのだ。
頭の中に埋め込めるのなら、言葉を思い受かべるだけで会話できるといい。
実際に声を出さなくて済むから他人の迷惑にならない。
そうだ、頭の中の言葉をデータ化できるようになれば、
世界共通言語化も進むかもしれない。
そうなればケータイは世界を救うかもしれないぞ・・・。

(2001.12)
「RADIO DAYSと愉快な未来」より

([携帯電話のグローバル化]へ続く)
by radiodays_coma13 | 2005-02-11 10:15 | 電話進化論
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