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言葉と文化
by radiodays_coma13
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僕のアイドル
 おとつい、街で、ノッポさんを見かけた。ノッポさんって「できるかな」のノッポさん。説明の必要もないか。誰でも知ってるよね?オーラは消していたが、シルエットですぐにノッポさんとわかった。自転車で軽く追い越して、後ろから来る誰かを待つように振りかえり、ガン見。もう、マジマジ、ノッポさんを味わいました。うらやましいでしょー。うらやましくない?それはおかしいな。うらやましくない人はちょっとどうにかしてる。ノッポさんですよ。キムタクとか、浜崎あゆみとは違うんですよ。レベルが違います。なんせノッポさんですから。

というような内容の電話を例によって数年会っていない友人の留守電に吹き込む。「…ああ、そう」といううんざりした声で気のない返信留守電。どうも、僕のアイドルは人に受けが良くないようだ。赤坂でお仕事をしていると、わりと有名人と言われる人とすれ違ったりすることが多い。それに、僕が働いているビルの中には、TVの製作会社があるみたいで、エレベーターでそういう人と乗り合わせることも多々ある。この間は根本はるみさんと二人きりになりました。うふふ。

 しかし、そんなことがあっても、僕は平常心を装うことができる。というよりもあまり興味がない。僕にとって有名人ならそれは別の話なんだけどね。でも、僕の中での有名人は赤坂でうろうろしてたりはしない。どこにいけば、彼らと出会えるのか、謎だ。河合隼雄さんと言ってもなかなかピンと来る人はいないだろうね。河合さんは偉い心理学の先生。大学生の頃、僕の部屋に張ってあったポスター(僕にとってはグラビア)は河合さんだった。それでも僕にとってはアイドルなので、笑い方だったり、話し方だったりマネをしてみたりしてね。

 でも、幸いなことに稀に、彼らと遭遇することもある。大江健三郎さんとはトイレで肩がぶつかった。とても不機嫌な顔をしていた。ちょっとうれしかった。養老先生の講演会の一番前の席に座ってたら唾液が飛んできた。やっぱりちょっとうれしかった。河合雅雄先生(猿にくわしい人)の講演会では、僕は舞台の裏方をしていた。終わったあと、先生のマイクを嗅いでみた。臭かった。でも、うれしかった。だってアイドルだからね。

 時には、本当に幸いなことに、そんなアイドルと会話のチャンスもあったりもした。しかし、ここで、おかしなファン心理が働く。パターンは二種類。吉増剛造さん(詩人)と同席した時には、ただ、恐縮してしまって、日体大ラグビー部の先輩後輩みたいに、きょうつけしたまま、目を見ずに「っす!」「はっ!」と犬みたいに空回りしていた。…会話にならなかった。

 そして、もうひとつの反応。ファンの素振りを見せない。逆に「あんたと俺は平等なんだ」というわけの分からない闘争心を燃やす。皆がサインをねだっていても、素直になれない。僕はサインなんか要りませんから。とソッポをむいている。心では泣いている。ファンでありすぎるがゆえに、ファンとしてではなく、彼らと同じステージにあがりたくなってしまう。究極のファン心理である。これはもう、一種のストーキングなのかもしれない。乱入はしないが、できるだけの努力はしてみる。そして、とてもとても幸いなことに、僕のアイドルと努力の結果、一緒に仕事をするチャンスも何度かあった。そんな時は今までガマンした分だけ、思い存分、会話を楽しむ。それから、家に帰って布団に包まって、歓喜に叫ぶ。

 もしノッポさんがいなければ、僕はモノツクリの道には進んでいなかった。僕にモノツクリの面白さを教えてくれたのはノッポさんだ。それに、どちらかというとイジメラレッコな僕に人気者になるチャンス、みんなに自慢できること、みんなを楽しませる方法を教えてくれたのもノッポさんだ。「できるかな」を観たあとは、いつも同じものを家で制作した。お小遣いはみんな画用紙に消えた。小学3年生の頃には紙で作った玩具や迷路を10円で販売していた。小学高学年になると、紙でボードゲームを作ってみんなで遊んだ。中学になると、その頃、ようやく手に入るようになったパソコンでゲームを作って売っていた。それもこれも、ノッポさんのおかげなのだ。

僕のアイドル_c0045997_3431417.jpg だから、ノッポさんを見かけた僕は、ノッポさんに理由もなく冷たくあたった。まず睨みつけ、目が合うと意図的にそれをそらした。「ふんっ!何様?!」という具合に。そらした横顔にノッポさんの視線を感じた。足早に自転車でその場を去る、僕の口から出たセリフは「コンチクショー!」だった。自分でも意味が分からない。とても失礼なことをしてしまいました。でも、闘志にだけは火がつきました。「♪でっきるっかな、でっきるっかな、じゃあ、やってみせようじゃないか!」と心に何かを誓ったのでありました。
by radiodays_coma13 | 2005-12-31 03:43 | くだらないこと
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