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言葉と文化
by radiodays_coma13
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キッチン。仁義なき戦い
 本当に久しぶりにちゃんとした洋食を作って食べた。ここんところ、めっきり和食づいていた。もともと、料理は好きだが、和食なんて自分で作ったことがなかった。自分で作るといえば、もっぱら洋食と決めていた。それには割り切れる理由がある。自分で和食を作っても母の味に追いつけないのが分かっているからだ。何を作っても何かが足りない。同じレシピ、同じ手順、同じ素材で作っても結果は変わらない。母の鍋にはきっとなにか仕掛けでもしているのだ。

 癪なのだ。作っていても、いちいち母の忠告が聞こえてきそうで。本当に料理には口うるさい母なのだ。気を利かせて夕飯をこしらえても、うだうだ文句を言ってくるからかなわない。やれ、昆布を煮すぎだの、大根の角取りしていないだの。おかげでと言うべきか、料理の基本は叩き込まれた。しかし、今でも、母の前で、料理するのはびくびくする。だから、母が手を出さない洋食を専門で作るようにした。そうすれば、母にうだうだ言われなくて済む。住み分けというやつだ。

 それでも、実家を離れてしまうと、そうも言っていられなくなる。人が幼い頃に食べた味というのはその人のベースになってしまうものだと思う。毎日、パンとチーズでも平気だと思っていたが、長期の海外でそれが間違っていることに気が付いた。帰りの飛行機で、行きにはあんなに不味かったニセ寿司が極上の料理に思えた。おそらく、それ以来、観念したように和食一辺倒になった。

 僕は記憶力がちょっと落ち込むくらい悪く、注意力も散漫である。しかし、神様はひとつくらい特徴のある能力をくださるものでありますなぁ。食べ物に関する記憶力だけはズバ抜けていると僕は自分を信じている。一週間前の三食を全て記憶している。それから、料理の周辺にあった風景や環境、その時の気分など、料理を手がかりに思い出すことが出来る。それがどんなに古い記憶でも。これには周りの人もたいてい驚いてくれる。それから、味付けも、一度食べると忘れない。長い間、和食に手を出していなかったが、幸いにも舌が味付けを覚えていてくれる。もしかしたら、これは絶対音感ならぬ、絶対舌感ではなかろうか、というくらい自惚れている。

 しかし、僕はこの能力だけは職業にしないでおこうと決めている。僕にとって唯一の穢れない愉しみなのだから。どんなに機嫌が悪くとも、どんなに疲れていようとも、料理を作り食べることで平常心に戻ることが出来る。これを、職業という行為で汚したくない。これだけは守りたい。すこしナーバスなくらい料理を大切にしている。何故、そんなに過剰なのか、考えた事がある。それは自分がマザコンであることを惜しげもなくバラしてしまうが、自営業で忙しい母と唯一、共にすることが出来る時間は料理をしている時間だけだったことに起因しているのではないか。とにかく物心ついた時からキッチンが一番落ち着いた。

 で、何故、今日、洋食にしたか?それは、今日が金曜日の週末で、僕も、奥さんも仕事でクタクタで、わぁーって走り出してしまいたいくらいストレスを抱えていて、なにか刺激がほしかったからさ。へへへへへ。

キッチン。仁義なき戦い_c0045997_1381836.jpg今夜のメニュー
・トマトの肉詰め、ブルゴーニュ風
・目板カレイのフェンネルの包み焼き
・とんぶりと大葉の冷製カッペリーニ
・キンと冷えた白ワイン
 最近はマトンが安くで手に入るようになりましたね。トマトの肉詰めは通常、牛というイメージですが、僕はマトンが好きです。マトンとバジルの相性は抜群。タマネギをいためて、マトンのひき肉、岩塩、香辛料たっぷり。それに隠し味でハードチーズ。今日はミモレット18ヶ月熟成。それをゼリー状の中身をくりぬいたトマトにつめつめ。上からパン粉。オーブンで10分。
 鰈は鱗と内臓を取って、塩で下味。肝は大切において置く。フェンネルをたっぷり敷き詰めた上に鰈を置いてその上からもフェンネル。レモンのスライスを上に敷き詰め、さっきのトマトの半分を上からこぼす。もう一度、塩を振る。それをオーブンで15分。たっぷりのフェンネルとレモンが魚を蒸し焼きにしてくれます。それにしてもいい香り。
 とって置きの肝は初めの10分フェンネルと一緒に蒸し焼きにして取り出し、フェンネルと少量のトマトとすり鉢でペースト状に。塩と隠し味でナンプラー、これを焼き上がりの魚のソースに。
 とんぶりがパスタにそれもカッペリーニに合うのは偶然の発見。キャビアのように癖もないのでタップリかけても美味しい。噛む度にぷりっぷり。大葉はハーブとして扱っても、十分に個性を発揮してくれる優れもの。残りのトマトとタップリのオリーブオイル。生にんにくスリスリ。バルサミコ。あとはパスタがうまく茹で上がるのを神に祈るだけ。
 残りのフェンネルはお風呂に浮かべてハーブ風呂。これでお膳立ては揃いました。ふふふふ。へへへへ。頂きまーす。

追伸:妻はたらふく食べた後、あっと言う間に寝てしまいました。僕は今、一人でワインの残りを飲みながら、自慰的文章で自分を慰めています。ぐぐぐぐ…。
by radiodays_coma13 | 2005-07-23 01:38 | 食べる事と飲む事
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