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言葉と文化
by radiodays_coma13
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Tシャツ文化の可能性
染色を生業にしていた頃がある。自然の植物から繊維を取り出し、糸を紡ぎ、ハタを織る。そうやって気が遠くなる手間をかけてできた生地を自然の植物から取り出した染料で染める。


繊維から、染料、触媒まで、全ての素材を野山に行って自分達で調達する。そうやって時間をかけてこしらえた布はある意味で、現代という時代からは逆行しているように思える。


こんなスピードの時代、値段は高いし、どこにでも売っていないし、洗濯機で洗えないような草木染。でも、なぜか商品は結構飛ぶように売れた。


一方で、安価で一人一人にカスタマイズされたデザイン、丈夫で長持ちのTシャツはどこにいっても簡単に手に入る。Tシャツだけを売るインディーズショップを最近街中でよくみかける。


この二つはまるで違っているように見える。しかし、これらのものを人が欲する理由にはかなり共通したところがある。それはなにか。


モノがなかった時代、人々は衣食住の必需品を手に入れることで精一杯だった。でも、それらが満たされた我々は「どんなものを手に入れるか」ということに頭を痛めるようになった。


流通も不確かな時代、農民は農民の身なりをしていた。坊さんは坊さんの格好をし、与太は与太、商人は商人のユニフォームを着ていた。それしか手段はなかった。スタイルはそのまま、その人の人とナリを伝えていた。


しかし、今、そんなに無理をしなくてもどんなものでも手に入る時代。モノはあらかじめ行き渡り、価値観もなにもかもお金で買える時代になった。昔のように一見しただけで、その人の経済状況や職業を判断するのは難しくなった。


価値観があらかじめ壊れて、平たくなったこの現代を、ある美術評論家は「スーパーフラット」と表現する。しかし、だからこそ、今、自分の価値観を表現することが意味を持つ時代である。


人はブランドに身を固め、好みの音楽に合わせてスタイルを変え、しゃべり方や性格までカスタマイズする。自分自身を着替える時代がやって来たのだ。


モノはただ良いだけでは売れなくなった。「それがなにと繋がっているか」をハッキリしないと誰も買わなくなってしまったのだ。誰のために?このメッセージを忘れると、買ってもらえない。


「人はもう商品を買わなくなった」と言われる。では、何を買っているのか?わたし達は「関係」を買っているのだ。


現代における染色とTシャツが同じ意味を持つのはココです。つまり、何に繋がろうとしたのか、ということ。


草木染はナチュラルやエコロジー、地球に優しい自分に繋がりたくて、購入する。Tシャツはいわば自由ノート。セックスピストルズが好きだったら、破れた服を着なくても、ピストルズと書いてあれば、それでいい。Tシャツに森の絵を書けば、メッセージとしては草木染と同じになるわけです。


もちろん、草木染めはまったく別物です。風合や肌触り、機能性もTシャツとは全く異なります。これは喩えです。でも誰もが草木染を買えるわけではありません。


今の日本人にとっては、自分が何と繋がっているのかというメッセージの方がより大きな意味を持つということです。そういう意味でTシャツはものすごく現代的です。もうメッセージボードそのものです。衣服以上の意味を持っている。いや、衣服の意味の部分だけを抽出したような存在とも言えます。


きっと、今後、Tシャツはもっと大きな文化をつくっていくと思う。もっとメッセージを自由にカスタマイズできるようになり、個人のメッセージだけでなく、団体のメッセージやピクトグラムのような意味を持つサインとして。自分のメッセージを発信するだけではなく、メッセージを交換したり、自分自身へのメッセージとしても発信する。衣服という存在を超えて新たな意味を持つかもしれません。


それは新しいメディアとなって、情報を発信していく場になっていくでしょう。例えば、自分の絵や詩をTシャツにして、街で出会ったらサッカーの試合終了後みたいに、お互いにTシャツを交換したりできたら、本当に素敵だなぁ。



素敵と思った人は
「詩人類T-shouts!」
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by radiodays_coma13 | 2006-09-05 23:57 | 考える
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