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言葉と文化
by radiodays_coma13
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神保町のオナラ
 連休を返上して連日徹夜の猛烈仕事野郎になる予定だったのだが、思いのほかスムースに事が運び、ちょっと休日らしいひと時を過ごす余裕ができた。というわけで神保町にお出かけ。僕はなにをかくそう特に目立った浪費癖も、車好きでもないので、とても地球に優しい、リーズナブルで安上がりな人間を自負しているのだが、どうやら本にだけは弱いらしい。なので、普段はあまり神保町には近づかないようにしているのだが、短い時間でストレスを解放するには神保町が一番。

 とにかく神保町界隈には魅力的なものがたくさんありすぎる。無数の本に、「さぼうる」「ラドリオ」「ミロンガ」「上島珈琲」等、気の利いたカフェ、「見本帖」という紙屋、おいしいお蕎麦においしい和菓子、スポーツ用品に楽器屋、「ジャニス」というマニアックなCDレンタルショップ。一体、僕にどうしろというのだ。僕にとってはディズニーランドよりももっと狂おしい。僕の好きなものを集めてぎゅっと凝縮すればきっと神保町ができあがる。

 でも、ありすぎるというのも果たしてどうだろうか。いちどに好きなものを好きなだけ渡されたらどうなるか?小さい頃、思いました。「部屋にいっぱいのお菓子を広げてそこで寝転びたい。」その夢が一度だけ叶ったことがあります。答えは「ひどく疲れる」です。どうしていいのかわからず、なぜか体中の力が抜けて、ひどく気だるい。それから、均等に体がゆるくなるので、やたらとオナラがでるのです。それ以来というべきか、僕は好きなものの前にいるとオナラが出ます。

 本屋や和菓子屋で立っているとぺっぺけぺっぺけオナラが湧き出します。なので、神保町に行くと、街中いたるところでオナラがこんこんと沸き出ずるのでございます。困ったものです。街から出るころには体中のガスが出尽くしたのではないかというくらいに体はフワフワして、いやクラクラなのかもしれませんが、とにかく軽い。こういうのを本当のガス抜きというのかもしれません。

 本日も「ランダムウォーク」というデザイン書がかなり充実した書店で高価な本を2冊、衝動的に買い、ジャニスというCDレンタルショップでCDを10枚レンタル、おはぎ2個、桜餅2個、最中一個を買い込み、上島コーヒーで黒糖アイスミルクコーヒーのラージサイズをぽかぽかした西日を浴びながら、「やばい、脳みそが溶ける溶ける」とのたまいつつ2杯痛飲し、いったい自分のどこがリーズナブルで安上がりな人間なんだと反省ひとしきり、ぺっぺけぺっぺけオナラをこきながら帰宅した次第であります。

 神保町は反則です。たとえ一日中いても、いや、一生かかっても、街の隠して持っている財産のほんの一部分すら味わえないという焦り。一体、どこからみればいいのか。本屋に入って一番困るのは、どの本も魅力的に見えること。そして、どんなにがんばっても僕がみれるページはここにある全てのページからしたらほんの触り程度であるという悔しさ。ヘタに文字に目を通すと、もうそこから一歩も動けなくなるので、本を手にとって手触りと重たさを楽しみ、タイトルの文字を撫ぜて、中身を想像し、ペラペラ漫画を見るようにパラパラと本のノンブルだけに目を通す。これでも時折、本に吸い込まれそうになる。そうして、最後には、決まって自分の非力にただ呆然と我を失い、真っ白になって本屋を後にするハメになる。

 僕の夢は、もし、僕がアラブの石油王なら本屋ごと買い占めたい。それが無理ならいつかは古本屋の岩窟王というのも素敵だが、ちと貧乏くさい。なにもかもから引退したら図書館の地下に住む謎の老人というのも悪くないなあ。とにかくそれくらい本が好きというお話。間違っちゃいけないのは本を読むのが好きなのじゃないと言う事。もちろん、大好きだけど。本を読むことは本の魅力の一部分に過ぎない。本という大きな魅力の総体からしたら、ある意味で分かりやすい象徴的な魅力。ショートケーキのイチゴみたいなもの。とにかく本という存在が好き。本というメタファー、本というアプリオリな存在、本という存在の仕方、全てが好き、全面的に好き、無条件降伏的に好き。泣いちゃうくらいに好き。初恋のように。

神保町のオナラ_c0045997_1972478.jpg でね、ついでの話だけど、その本好きも真剣に取り組むといろいろな発展もあるもので、ちょくちょく仕事で本の装丁をさせてもらったりしている。自慢したかっただけなんだけどね。せっかくブログをしているんだから、自分の宣伝に使ってみるのもいいだろうと思うので写真をアップ。ピンときた人はもちろん依頼承ります。仕事はもちろん、楽しくないはずがない。しかし、本好きを自負しているだけに、自分で設けるハードルが高すぎる。なかなか納得のいく本づくりとなると難しいものです。
神保町のオナラ_c0045997_1992345.jpg
 僕の理想の装丁は、ゴテゴテ主張し過ぎず、カッコ良すぎず、上手すぎず、奥ゆかしく、本文の魅力をやさしく包むようなもの。僕が今まで良いと感じた装丁は、静かに主張するものでした。腑に落ちるデザインというのが言葉としてしっくりします。こんなことを書き出すとキリがありません。僕の家には「本の魅力について」というお題でびっしり書き込んだノートが二冊存在するくらいです。その中をパラパラめくってみると、赤線で囲った言葉がありました。これは良き「モノツクリ」について語った僕の一番好きな言葉。吉田兼好「徒然草」の一文。これを書いて締めくくりにしたいと思います。 
「よき細工は、少し鈍き刀を使ふといふ。
妙観が刀はいたく立たず。」
良い細工は少し切れ味の悪い刃物を使うという意味です。うん、深いです。

とダラダラ好きなこと書いていたら、まだまだ仕事があることに気がついて、今、胸騒ぎと共に、いや~な汗が出てきましたよ。どうしましょうか…。誰か何とかしてください。
by radiodays_coma13 | 2006-01-09 19:14 | 文字について
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